概要編ー中学校
中学校技術・家庭科(技術分野)におけるプログラミング教育
1 技術分野におけるプログラミング教育の取扱いについて
中学校では、技術分野がプログラミング教育の中核を担う教科です。平成29年3月に公示された新中学校学習指導要領においては、小学校におけるプログラミング教育の成果を生かし、発展させるという視点から、従前の「プログラムによる計測・制御」、「ディジタル作品の設計と制作」に関する内容が、「計測・制御に関するプログラミングによる問題の解決」、「ネットワークを利用した双方性のあるコンテンツに関するプログラミングによる問題の解決」に改訂されました。以下のような方針で内容が充実・改善されています。
〇 従来から指導してきた計測・制御に関するプログラミングに加えて、コンピュータやスマートフォン等の画面等で利用されているコンテンツを新たに取り上げるなど、プログラミングを通して学ぶ。 〇 制作するコンテンツのプログラムに対して「ネットワークの利用」及び「双方向性」の規定を設ける。 〇 問題を解決するために、計測・制御システムの構想を学ぶ。 |
このことは、技術分野の目標である「技術を評価、選択、管理・運用、改良、応用することによってよりよい生活や持続可能な社会を構築する資質・能力」の育成を目指すなかで、内容「D 情報の技術」の学習において、技術分野の目標とともにプログラミング教育の目標の達成も図ることを意味しています。
2 内容「D 情報の技術」の項目と学習活動で育む能力について
この内容では、次の(1)から(4)の項目について学習します。
(1) 生活や社会を支える情報の技術
(2) ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツに関するプログラミングによる問題の解決
(3) 計測・制御に関するプログラミングによる問題の解決
(4) 社会の発展と情報の技術
(1)から(4)の学習活動をとおして、以下のような能力の育成を目指します。
〇 生活や社会の中からプログラムに関わる問題を見いだして課題を設定する力の育成 〇 プログラミング的思考等を発揮して解決策を構想する力の育成 〇 処理の流れを図などに表し試行等を通じて解決策を具体化する力の育成 〇 順次、分岐、反復といったプログラムの構造を支える要素等の理解 |
3 「D 情報の技術 (2) 」の位置づけとねらい、学習指導のポイントについて
平成29年公示中学校学習指導要領における「D 情報の技術 (2) ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツに関するプログラミングによる問題の解決」の記述は以下のとおりです。
(2) 生活や社会における問題を、ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによって解決する活動を通して、次の事項を身に付けることができように指導する。 ア 情報通信ネットワークの構成と、情報を利用するための基本的な仕組みを理解し、安全・適切なプログラムの制作、動作の確認及びデバッグ等ができること。 イ 問題を見いだして課題を設定し、使用するメディアを複合する方法とその効果的な利用方法等を構想して情報処理の手順を具体化するとともに、制作の過程や結果の評価、改善及び修正について考えること。 |
また、新学習指導要領解説では、ねらいについて以下のように記述しています。
生活や社会の中から見いだした問題を情報通信ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによって解決する活動をとおして、情報の技術の見方・考え方を働かせて、問題を見いだして課題を設定し解決する力を育成するとともに、情報通信ネットワークの構成と情報を利用するための基本的な仕組みを理解させ、安全・適切なプログラムの制作、動作の確認及びデバッグ等ができるようにすること。 |
さらに、学習指導のポイントに関して、文部科学省「中学校技術・家庭科(技術分野)におけるプログラミング教育実践事例集」において、次の3点が挙げられています。
1 メディアを複合したコンテンツの構成 「双方向」及び「ネットワーク」だけに注目しがちであるが、デジタル化された文字、音声、静止画、動画などの複合化することで利便性や安全性を高め、人間にとって意味のある情報として表現したコンテンツを構成すること。 2 情報通信ネットワークの利用に関する配慮 情報通信ネットワークの構成と情報を利用するための基本的な仕組みと、実際に制作する際に用いられる技術との違いをしっかり理解した上で指導に当たる必要がある。例えば、社会で広く普及しているチャットサービスの多くは、クライアント同士で直接通信するのではなく、クライアントとチャットサービスを行っているサーバ間の通信が行われている。 3 適切なプログラミング言語の選択 小学校での学習経験の実態を踏まえる必要はあるが、小学校で使用してきたプログラミング言語をそのまま使用するといったことを意味しているわけではない。令和4年度から高等学校・情報科においてプログラミングに関わる学習内容が充実する状況を踏まえ、小・中・高等学校のプログラミング教育の関係性に考慮し、目標とする資質・能力を育成するための活動に適したプログラム言語を選択することが大切である。 |